パイプオルガンのペダル、「踵か、つま先か」
演奏のスタイルにも流行がある
パイプオルガンのペダル奏法で、「踵で弾くか、つま先で弾くか」迷うことはあると思います。
実際に、音楽界に身を置いていると、「オルガンの”つま先・踵”」は、音楽界全体の流れと関係があることです。
その変遷と、私自身がどう考え、今どうしているかを書いてみたいと思います。
バッハもロマン派的に演奏されていた時代があった
かつてオルガン奏法は、バロック作品も、踵を多用する演奏が主流のことがありました。全体に、アーティキュレーションの表現以外は、レガート奏法が主流でした。この時代、バッハをロマン派的に弾くことがオケなどでも流行っていました。
オルガンだけではないピリオド奏法の流れ
その後、バッハの時代のオルガンの仕様などから研究し、手鍵盤はノン・レガート奏法主流、足はつま先のみで演奏するべき、というピリオド奏法が力を持っていました。
オーケストラでも、作曲された時代に合った奏法や楽器はとても持てはやされました。
例えば、バッハだけでなく、ベートーヴェンのシンフォニーは、その時代にそうであったであろう人数と弾き方の解釈で演奏する、というふうに。今でも、その考え方もあります。
弦楽器のかたも、今は音大でも両方学ぶと思います。(日本では分かりません)
ピリオドだけで、ありがたがられる時は終わった
現在ですが、私の現場から受ける感じでは、それもひと段落 落ち着いたかと感じます。
ピリオド奏法が好きなお客様はピリオド奏法の奏者の演奏を聴きに行くし、やはり興行ですから、演奏家だけで成り立つものでもありません。
実際、私はどちらかというと「ベートーヴェンはピリオドだと何かせっかくオケ聴きに行った醍醐味が…」なんて思うタチです…。
つま先か踵よりも、どう表現したいのか
オルガンの場合、「踵」か「つま先」かの、フォームの問題ではありません。
手の弾き方はもちろん、その曲をどの奏法で弾くかということに関わってきますし、テーマをどう弾きたいのかは最初に考えなくてはなりません。
その他の場所も、自分はこう表現したいのに、そこでブチっと切れたりするのはやはり改善すべきです。
全部つま先で弾けば、バッハの求める音楽になるんだという考えもありますが、日本のホールでは残響も考慮すべきですし、歴史的オルガンは存在しません。
なので、自分が弾きたいように弾いて下さい。
「どうしてそちらで弾くかという明確な意思を持って。」
私の奏法
実は、仕事の現場ではカール=リヒターやヘルムート=ヴァルヒャの演奏を聴いてオルガンファンになったお客様も多いです。
そういったことも考慮する必要が私にはあります。
またアーティキュレーションを考慮しますが、そのホールによりタッチは変えますので、ペダリングも変わります。
当然、海外では全く別の弾き方をします。
工夫していること
ここからは、全く違う話で、私の裏技になるのですが、
あえて弾きにくいほうのペダリングを使う時があります。
手より足の方が速く動いてしまう時です。
弾きにくい方の足(右・左)や、弾きにくい所(踵・つま先)を使うと制御できます。
ちょうど、利き手の右手のほうが左手より弾きやすい時の感覚です。
良かったら試してみて下さい。
お役にたちましたら幸いです。