【音大生向け】おすすめ楽譜と「バロック調律法と十二平均律」
オルガニスト長井浩美です。
今日は、
- 上級者向けのパイプオルガン楽譜紹介と、
- バロック調律法と十二平均律の違いについて
です。
音大生や、
音大を目指していた方、
ちょっと難しい曲に挑戦したい方、
いつか弾いてみたい方
音大の授業の復習や興味のある方
等に。
ヴォカリース
ラフマニノフの「ヴォカリース」。
ラフマニノフが愛した中世の聖歌「怒りの日」の冒頭が使われているとも言われています。
中世の短旋律聖歌 怒りの日冒頭
ラフマニノフ「ヴォカリース」冒頭
- ペダルで、二声を弾く。
- 踵・つま先奏法を駆使しています。
- 黒鍵が多いです。
2:50辺りの再現部、美しさに泣けますが、
ペダルの重音で顔が真剣で怖いです。↓
ドヴォルザークの「スターバト・マーテル」
悲しみの聖母マリアは立ちぬ。
スターバト・マーテル・ドロローサ。
こちらも中世の聖歌が由来。
- ペダルに踵奏法
- ペダルにオクターブの重音
- 曲をまとめる音楽性がある程度必要
ペダルについては、1:40、2:00からの箇所です。動画を貼ります。
低音のストップをかなり足したので、ヘッドフォンでお聴き頂けましたらお分かり頂けるかと思います。
調律法について
ヴォカリースのcis moll。
ラフマニノフは後期ロマン派の作曲家なのでこの調が使われていますが、
嬰ハ短調は、バロック 期にはあまり使われていません。
ウルフといって、gis -disの5度が唸りを生じるため、嬰ハのような調は避けられました。
調律法が、十二平均律になる前の話しです。
(オルガンは、今でもたいがい平均律ではありません。)
純正律の5度は、十二平均律の5度と比べると、
2 cent 高い(広い)のです。
なので、完全5度をどんどん積み重ねて行くと、
C から離れれば離れるほど、ズレが大きくなっていきます。
centというのは、音の高さの単位です。
半音は、100 cent です。
微量のようですが、弦楽器、管楽器のプレーヤー、声楽家のかたなどは、自然と純正律で演奏しています。
鍵盤の私たちは、それはできませんが、その他の楽器の方々は、長三和音の第三音は、平均律より13 cent 下げています。
ピアノより、13cent 低いので、合っていないのです。
お役に立てましたら幸いです。
長井浩美