作曲家と演奏家のインスピレーション
家族が作曲家のため良く感じるのですが、
作曲技法は言語だ、ということです。
英語を知らなければ英語の文章が書けないように、
例えば私は、12音技法の曲は書けません。
もしかすると頑張れば死ぬまでに書けるかもしれませんが、あまり興味もありません。需要もありませんしね。
私達作曲家以外の人間は、作曲家はインスピレーションで曲を書いていると錯覚しがちです。
しかし、作曲技法を習得していなければ
何か降りてきても受信できないのです。
和声法を色に例えると、
赤、青などを表現できたとしても、
混ざった紫、青が強い赤…などのニュアンスを出すことは出来ないのです。
さて、私たち演奏家もインスピレーションで演奏しているのでしょうか。
毎瞬浮かぶ閃きと瞬発力によって演奏は成り立っています。
インスピレーションを「瞬時に閃くアイディア」と訳すならば、まさに演奏は毎瞬がインスピレーションの塊です。
この瞬時に閃くアイディアですが、
作曲技法、音楽語法を知ってこその閃きではないかと思います。
知っている中から閃いても、インスピレーションと言わない…と言われるかもしれませんが、
器が小さいとキャッチできないと思うのです。
各作曲家の作曲語法を知ることも助けになります。
バッハでしたら、オルガン小曲集などでバッハの音楽語法をきちんと学習した上の大曲、ということになるでしょう。
それらを何十にも何百にも積み重ねた上でのインスピレーションは価値があると思います。
それを毎瞬毎瞬行うには、まるで日本語が話せるような音楽語法の習得が必要だと感じます。
オルガニスト長井浩美