フィリップ殿下 (エリザベス女王配偶者) 葬儀の音楽 全曲目解説
オルガニスト 長井浩美です。
英国ロイヤルファミリー・葬儀の音楽
2021年4月17日(土)に執り行われましたフィリップ殿下(エディンバラ公爵)葬儀の音楽について、書かせて頂きたいと思います。
私は大学院時代、英国国教会のイギリス音楽をテーマに修士論文を提出していることから、
どなたかのお役に立てればと思います。(マイナーな話題ではありますが。)
まず初めに、エディンバラ公爵様が、安らかに天国で神様の御元にいらっしゃいますようお祈りいたします。
「Duke of Edinburgh Prince Philip funeral」
等で検索して頂けば、たくさん出てきます。
最初にウィンザー城グランドでの軍楽隊の讃美歌の葬奏があり、
セントジョーンズチャペルへの葬送行進、
礼拝堂での式へと続きます。
お葬儀の選曲は、多くは殿下ご自身によるものとのことです。
葬列での音楽(葬送)
演奏:3つの合同軍楽隊による。
三種類の制服の軍楽隊員がいるのが分かります。
- 「我は汝に誓う」(グスタフ・ホルスト)
惑星より「木星」に、「我は汝に誓う」という歌詞が付けられ、讃美歌として英国で歌われています。
- 「至高の犠牲」(チャールズ・ハリス)
Charles Harris (1865-1936)による英国民愛唱讃美歌。
- 「エルサレム」(ヒューバート・パリー)
歌詞はウィリアム・ブレイク。エルガーがオーケストレーションを担当。
- 「美しの島」 (トーマス・バイレイ)
讃美歌。国民愛唱歌。Rememberance Dayでも演奏される。
- 「ニムロッド」(エルガー)
エニグマ変奏曲。Rememberance Dayでも演奏される。
- 葬送行進曲第1番(ヨハン・ハインリッヒ・ヴァルヒャ)
ドイツの作曲家兼指揮者(1776-1855)。イギリス王室・軍隊の葬送・Remembarance dayで使用される作品。
礼拝での音楽・奏楽
王室・海・海軍とゆかりの作品を公爵自身が選曲されたとのこと。 またイギリスでは、「パイプ」といえばパイプオルガンではなくバグパイプです。
演奏:クワイヤー、オルガニスト、パイプ(バグパイプ)、ラッパ隊
クワイヤー&オルガン
密を避け、四名で行われた。
- センテンセス (W.クラフトの葬儀用作品より。18世紀の英国宮廷作曲家、オルガニスト。作曲以来、国葬で使用されている)
- メリタ(船乗りにまつわる讃美歌。海での危機に、神に助けを願う歌詞。J.B.ダイクス1823-76により作曲。)
- ジュビレイト デォ (B.ブリテン。1961年ごろ公爵ご自身により委嘱された作品。楽譜表紙には公爵委嘱作品であることが書かれています。)
詩篇104 (W.ラヴレディ。1996年公爵の75歳の誕生日を記念して書かれた作品。その後の誕生日でも歌われていた。)
- 天にまします我らの父よ
- 旅立ちのコンタキオン (コンタキオンは、正教会の聖歌の一形式。ロシア正教会のキエフのメロディに起源を持つ聖歌。公爵はギリシャ出身のため、正教会の作品を選曲。)
バグパイプ
哀歌「森の花」 (スコットランド軍の敗北を歌ったスコットランド民謡。バグパイプによる)
軍隊ラッパ隊の信号ラッパ交互奏
フィリップ公爵の特別なリクエストによるもの。伝統的な海軍の信号ラッパで、海軍関係の葬儀でも用いられる。
- 軍葬ラッパ (英国海兵隊ラッパ隊による。兵士が最後の休息を取ったことを表す)
- 起床ラッパ (王立騎兵隊トランペットによる。海軍の葬儀で伝統的に奏される)
- 戦闘配置 (英国海兵隊ラッパ隊による。軍のすべての者が配置に着く。フィリップ公爵から家族皆が葬儀に集まることを呼びかける意図)
ナショナル アンセム 神よ、女王を守りたまえ
オルガン
- プレリュードとフーガハ短調(バッハ)
以上です。 エディンバラ公爵様が天国で平安に満ちていらっしゃいますよう、お祈り申し上げます。 そして、お葬儀での幅広い作品群、 ありがとうございました。